エリサ・ジョンソンが語るセルフィーと政治

マジック・ジョンソンの娘であり若きスターであるエリサが、セルフィーとリアリティ番組の舞台裏を明かす

  • インタビュー: Eva Kelley
  • 写真: Elisa Johnson

今日では、ほぼあらゆる人が何らかの形態の(自己)中継に関わっている。スターの座は庶民的になったし、監視の目が強化されつつある世界では、見られることに同意することこそ、もっとも自立した選択肢に思える。マジック・ジョンソン(Magic Johnson)の娘エリサ・ジョンソン(Elisa Johnson)は、去年の夏、テレビ界のセレブリティに仲間入りを果たした。以前リアリティ番組「リッチ キッズ オブ ビバリーヒルズ」 に出演していた兄、EJ・ジョンソン(EJ Johnson)と組んだ番組「EJNYC」は、ニューヨーク・シティで暮らす若者のジェットコースターのような日常を追いかける。

リアリティ番組の人気は私たちの文化について何を語っているのか、そして、ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)との出会い、ファッションの政治性について、エバ・ケリー(Eva Kelley)がエリサ・ジョンソンと対話した。

エバ・ケリー(Eva Kelley)

エリサ・ジョンソン(Elisa Johnson)

エバ・ケリー:お兄さんといっしょにリアリティ番組に出るのは、どんな感じでしたか?

エリサ・ジョンソン:実は、もうやりたくないって決めたの。あれは、私より兄のほうが熱心だから。いっしょにテレビに出るのは楽しかったけど、私はファッションの方向へ進みたいって兄に言ったの。

もう出たくない理由は?

私には向いてない、って感じたから。ある程度の自信がないとダメなのよ。人から色んなことを言われることに対して、準備ができていないとダメなの。私には無理。根っから現実の世界の人間だから。それに、番組では、たまに演技をしないといけないシーンがある。それがリアリティ番組の現実よ。

リアリティ番組を見ている多くの人が、どこまでリアルなのかって考えていると思います。

配役はとても自然だったわ。話の展開も自然だった。いくつかのシーンでは、本当は話したくなくても、特定の話をするように仕向けられることもあった。でも、仕込みと言っても、その程度よ。例えば、私は養子だけど、実母と会うシーンで、「初めて顔を合わせたとき、どんな感じだったか話してくれる?」みたいな。

それ、見ました。とてもパーソナルな話題ですよね。そういう瞬間を大勢の視聴者に見せるという壁を越えるのは、難しかったですか?

撮影に不安はあったわ。私って、話す内容を取捨選択しながら話せない人だから。お喋りなのよ。母といっしょのシーンは嬉しかった。別に隠す必要は感じてなかったし。あの後、養子の人たちや養子をもらった人たちから沢山メッセージをもらって、感動したのよ。特に、誰かのためになれる、誰かの役に立つって思える状況は、シェアをすることが大切だと思うわ。

リアリティ番組の人気は、現在の文化の何を物語っていると思いますか

本当のこと、聞きたい? 私、みんなみたいにリアリティ番組を見てないの。自分の番組だって見ない。他人の生活には、全然興味がないもの。ポジティブなリアリティ番組だったら、人のためになると思う。例えば、私たちの番組はそうよ。兄はゲイで、それを家族にカミングアウトして、父がサポートしている様子を見せてる。私たちはクリスチャンとして育てられたから、簡単なことじゃなかったのよ。でも、家族が息子が同性愛者だってことを知って、その上で彼を愛する様子を見せることができる。そういうのは、リアリティ番組に参加する理由になるし、インスパイアされるためにリアリティ番組を見るっていうのもありだわ。

リアリティ番組の人気には、非常に興味深いものがあります。私たちがゴシップ好きなのは、コミュニティの感覚が持てるから。他人に関する情報を交換しているとき、互いにつながっているように感じられるからです。生活が小さなコミュニティから大都市へ変化すると、相互のつながりが空洞になる。だからリアリティ番組にあれほど人気があるんではないでしょうか。ご近所とはつながってないけれど、友達と番組の話を共有できる。まるで、模擬コミュニティみたいに。

そうね、私もそう思うわ。人によっては憧れる人が必要で、誰であろうと、テレビに出ている人とつながれるなら、なおいいのよね。

ソーシャル メディアがクリエイティブ業界でとても重要になっていることについて、どう思いますか?

インスタグラムは、みんなが同じ立場に立てる道を開いたと思う。今は、誰でも有名になれるわ。あっという間に拡散されるから。私に関しては、今のところ、良い感じよ。私は、私にふさわしいフォロワーが欲しいの。その点、エージェントが準備してくれたプログラムのおかげで、どこの誰が私をフォロワーしてるのか判ったし、女性フォロワーと男性フォロワーの数も判った。女性のフォロワーが結構いたのが、自信になったわ。

どうして、そのことがそれほど大切なのですか?

私はインスタグラムで起こるムーブメントが好きよ。ポジティブな影響を与える「インフルエンサー」であることが大切なんだって、みんなに知って欲しい。若い子たちに「わぁ、エリサは裸を晒さないですごいことをやってる」って思って欲しいの。みんな体を見せるけど、自分の体に自信があるのならそうすればいいし、その人次第だわ。でも私は、ファッションを通して、女の子たちに自分を好きになって欲しい。ファッションで自分を表現できるってことを、知って欲しい。

本当のこと、聞きたい?
私、みんなみたいに
リアリティ番組を
見てないの。
自分の番組だって見ない

若い子たちのことを考えると、まだ感受性の強い時期にどんなイメージに晒されているのか、私も時々心配になります。イメージの攻撃から逃れるのは本当に難しいですからね。

分かるわ。特定のスタイル、特定の暮らし方だけに限定されてるのは、ある意味でとても残念だわ。私も同じことをやってる。見ようとしなくても、いつも目の前に突きつけられてるんだもの。

「イット ガール」という言葉が、突然、まったく時代遅れに感じられるのが面白いですよね。「イットガール」と「インフルエンサー」に違いはあるのでしょうか? それとも言葉が違うだけで、意味は同じでしょうか?

「インフルエンサー」は、若い人が尊敬できる人物だと考えてるわ。私は、特定の写真は投稿しないって決めているの。それを見た若い女の子たちに、そういうことをしないと認められないんだ、って思って欲しくないから。

では、インフルエンサーには信念がある点が違いですか?

そうね。

大統領選の前に、あなたが家族と一緒にヒラリー・クリントンを自宅に迎えている写真を見かけました。彼女はどんな人ですか?

私の父は、ああいう資金集めのイベントを家でよくやるし、ずっとヒラリーを支持してるの。私がヒラリーに初めて会ったのは、8歳ぐらいの頃。すごく良い人よ。個性的で、とってもユーモアがあって、クールな女性。

名声はある程度の政治的責任と伴うと思いますか?

私の父はいつも、自分の意見、政治に対する自分の意見を投稿してるわ。同時に、人が見ていることも分かってる。いつも見られてることを頭に留めておかないとダメなの。注目される存在だと、何を発言しても必ず反応が返ってくるわ。否定的な反応も、肯定的な反応も。それでも構わないのだったら、投稿したいことを投稿すべきだと思うわ。

選挙結果がわかったとき、どんな気分でしたか?

本当に泣いたわ。何が恐ろしいかって、今までにこんなこと、起こったことがないもの。自分の国の指導者を憎む世界に住むなんて、金輪際考えたこともなかった。私たちは、オバマにすっかり甘えてたんだと思う。

ファッションを使って政治的主張を表現することを、どう思いますか?

私、ヒラリーのシャツを着て、テキサスのイベントに行ったのよ。あのシャツが好きなの。でも、否定的なコメントも言われたわ。「偉大なアメリカを再び」とかね。ファッションと政治が結び付けるのは、素晴らしいことだと思うわ。全然反対しない。

将来のあなたの夢は?

才能に恵まれたから、夢はたくさんあるわ。6歳の頃からずっと、歌やパフォーマンスが大好きなの。その道へ進みたいと思ってたら、母が「先ず大学を出てほしいわ。その後で、まだパフォーマーになりたいかどうか、考えてみれば」って。だからニューヨーク州立ファッション工科大学に進んだの。ファッションが簡単そうに思えたから。でも、デザインって、本当に専念しなくちゃいけなくて、社交的な生活は期待できないわ。私、社交もしたい。だから「ファッション ビジネスはどうかな?」って考えたの。ビジネスウーマンになりたいわ。長い目で考えてる。楽しいことは後からやってくるのよ。

  • インタビュー: Eva Kelley
  • 写真: Elisa Johnson
  • スタイリング: Scot Louie