Gaia Repossiと考える、21世紀の「豪華さ」の在り方
旅やアート、建築からの影響について語る、3代目のジュエラーの心と工房の内側を探る
- インタビュー: Jina Khayyer
- 写真: Jeremy Everett

ジュエリー界の巨匠、 Alberto Repossi(アルベルト・レポシ)の一人っ子として生まれたGaia Repossi(ガイア・レポシ)には、後継ぎとしてのプレッシャーがある。1920年、祖父のConstantin Repossi(コンスタンティン・レポシ)によってイタリア・トリノで設立されたファミリー・ビジネスには、他に後継ぎがいなかったが、彼女は臆することはなかった。父のアルベルトのように、描画の才能に恵まれていたガイアは、アーティストになるためにパリの美術の名門エコール・デ・ボザールで絵画を学んだ。彼女が家業に乗り気になり始めたのは、絵画を学び始めた後だった。自分自身の道を歩むようにと父親に励まされたガイアは、学校を続けながら、少しずつ会社を手伝うようになっていく。彼女が初めてRepossiにジュエリーのアイデアを提供したのは、19歳のとき。ダイアモンドネックレスをTシャツに合わせるという彼女のスタイリングは、ファインジュエリーの世界ではまだ誰もやったことがないハイとローの組み合わせだった。当時、父親のアルベルトが新聞でこう語っている。「時代は変わった。今や、母親が娘のファッションを真似る時代が来たんだ。娘が母親のファッションを真似るのではなくね」。2007年、ガイアが21歳のとき、彼女はRepossiのすべてのコレクションのクリエイティブディレクター兼デザイナーに就任し、ブランドを当代で最も人気のあるファインジュエリーブランドに押し上げた。また同時並行で、さらりと考古学と人類学で修士号を取ってみせたのだ。
ジュエリー界の巨匠、 Alberto Repossi(アルベルト・レポシ)の一人っ子として生まれたGaia Repossi(ガイア・レポシ)には、後継ぎとしてのプレッシャーがある。1920年、祖父のConstantin Repossi(コンスタンティン・レポシ)によってイタリア・トリノで設立されたファミリー・ビジネスには、他に後継ぎがいなかったが、彼女は臆することはなかった。父のアルベルトのように、描画の才能に恵まれていたガイアは、アーティストになるためにパリの美術の名門エコール・デ・ボザールで絵画を学んだ。彼女が家業に乗り気になり始めたのは、絵画を学び始めた後だった。自分自身の道を歩むようにと父親に励まされたガイアは、学校を続けながら、少しずつ会社を手伝うようになっていく。彼女が初めてRepossiにジュエリーのアイデアを提供したのは、19歳のとき。ダイアモンドネックレスをTシャツに合わせるという彼女のスタイリングは、ファインジュエリーの世界ではまだ誰もやったことがないハイとローの組み合わせだった。当時、父親のアルベルトが新聞でこう語っている。「時代は変わった。今や、母親が娘のファッションを真似る時代が来たんだ。娘が母親のファッションを真似るのではなくね」。2007年、ガイアが21歳のとき、彼女はRepossiのすべてのコレクションのクリエイティブディレクター兼デザイナーに就任し、ブランドを当代で最も人気のあるファインジュエリーブランドに押し上げた。また同時並行で、さらりと考古学と人類学で修士号を取ってみせたのだ。
Jina Khayyer
Gaia Repossi
宝石はかつてトロフィーとしての烙印を押されてきました。男性からもらうべきだという。しかしあなたは、自分で買う女性向けの商品を発表しましたね。
ガイア・レポシ:それがわたしの意図したところだから、うまくいって嬉しいわ。最初は、ブランドに関わりたいとは思わなかった。ジュエリーは、どこか古臭くてつまらないビジネスに思えて興味がなかったの。だから、始めはコンサルタントとして関わっていたけど、アートディレクターのような感じで働くようになって、なんとか古臭いイメージを払拭しようとしたの。そして、インスピレーションを受けた。ジュエリーはただの飾りであるべきじゃないわ。それは、持ち主と人生を共にするものなんだって。
あなたが最初にヒットさせて、いまだにベストセラーであるシリーズがBerbere(ベルベル)というリングとイヤーカフです。このシリーズに取り入れられている民族的な影響は、どこから来ているんでしょうか?
わたしが育った時代は、何も身につけない方がモダンで大胆だという考えだったわ。わたしは、アフリカや民族、とくにBerber(ベルベル)民族にずっと興味があったの。大学で考古学や人類学を専攻したおかげで、民族的なシンボルが持つ意味については深く学んだわ。だから、ジュエリーのことを考えるとき、民族やその民族が持つ物語を参考にするの。すべての装飾品は何かを語りかけている。ベルベル民族の女性は、指に刺青を入れていて、言ってしまえばただの黒い線なんだけど、それがミニマルで美しいの。最初のシリーズをデザインしているとき、わたしの心の中にはこのタトゥーがあったわ。そうやってあのシリーズが生まれたの。わたしがデザインするものは、わたしの心の反響みたいなものね。
以前、「父が母を思いながらデザインしたジュエリーを、母が身につけているのを見て育った」とおっしゃっていたのを読んだことがあるのですが、では、あなたは誰のためにデザインしていますか?
その問いは、わたしが自分に毎日問いかけているものだわ。わたしのジュエリーをつける女性はいったい誰なんだろうって。わたしたちのブランドは、すごく裕福でありながら、他とは違うものや新しいものに惹かれるという顧客をたくさん抱えている。そして、モダンで懸命に仕事に打ち込んでいて、自分にご褒美をあげたいっていう女性たちも。ブランドの責任者になると、いくら商業的な視点を持ちたくないと思っても、マーケットのことは考えてしまうものよ。でも、旅してみて、いろんな大きさの手を目にすれば、自ずとやるべきことは見えてくるわ。
「いろんな大きさの手」というのは?
ベルベル民族の手は長いわ。でも日本に行ったら、彼らはただ手が小さいだけじゃなくて、基本的に小さなものが好きだということに気がつくはずよ。
ということは、あなたが旅をしているとき、まず見るのは手ですか?
それだけじゃない。でもそうね、様々な手の形を知るというのはとても大切なことだわ。でも、ここのところ新しい課題に直面してるの。「豪華さ」という問題よ。
どういうことでしょうか?
豪華さの中に、どうやって新しさを求めることができるのか? うまく噛み合わないものを組み合わせることが一番面白い、ってこともあるのよね。わたしたちが思い浮かべる力強い女性は、だいたい男勝りなイメージが多いけれど、もしもその女性が男勝りな上にグラマラスだったらどうかしら? 対極にあるふたつが、何か面白いものを生むんじゃないかしら。今は、豪華さの中にさりげなく現代的な要素を組み合わせてみているところ。それがどう転ぶかはわからないけれど、とにかく試しているところなの。






ジュエリーはただの飾りであるべきじゃないわ。それは、持ち主と人生を共にするものなの
新しい作品を作り始めるとき、どこから手をつけますか?
いつも、ひな形になるようなものから始まるわね。何かの形だったり、彫刻、ドローイング、グリッドだったりする。エチオピアの子供たちのイヤリングの着け方とか、Frank Lloyd Wright(フランク・ロイド・ライト)の家のラインかもしれない。わたしは、現代美術も参考にするし、現代彫刻や現代建築におけるメタルの使い方なんかからもアイデアを見つけるの。Alexander Calder(アレクサンダー・カルダー)、Cy Twombly(サイ・トゥオンブリー)、Franz West(フランツ・ウェスト)、Richard Serra(リチャード・セラ)、Le Corbusier(ル・コルビジェ)、それからブルータリズムやミニマリズム、バウハウス運動から着想を得ることが多いわ。建築の要素と伝統的なファインジュエリーのテクニックを融合させたり、その境界を押し広げるようなことが好きね。それに、体系的に制作をするのも好き。ひとつのアイデアで、無限のバリエーションが広がるから。Berbereシリーズを例にとるなら、1500以上のバリエーションがある。一列、二列、三列、七列という具合にね。それから細いもの、太いもの、色違い、宝石がはめ込まれたもの。無限の可能性という考え方が好きよ。
デザインのためのスケッチは、すべて自分でするんですか?
そうよ。だけど、私の手書きのスケッチはあくまで方向性を示すだけ。そのドローイングを工房に送って、工房が「それで行きましょう!」みたいになることはかなり稀ね。チームに立体製図家が2人いて、ちなみにうち1人は建築家なんだけど、彼らが私のドローイングを立体的に発展させていく。その後に、蝋を手で彫っていく宝石彫刻家と一緒に、最終的な型に仕上げるの。
Repossiの工房はどこにあるんですか?
今も、トリノ近くのバレンツァにある祖父の工房と仕事をしているわ。金の加工が盛んな街で、祖父がビジネスを始めた場所なの。バレンツァの、もう少し大きな工房とも仕事をしているわ。85%のジュエリーはイタリア製よ。
では残りの15%はどこで?
フランスよ。パリにもひとつ工房があるから。工房の責任者は、うちの会社ともう40年近く仕事をしているわ。
一番最近のコレクション「Staple」は、あなたのパートナーであるアーティストのジェレミー・エバレットをモデルにしてデザインされたものですが、あなたはこのシリーズを男性向けとしても展開していますね。これはまさに、初のユニセックス高級ジュエリーですが、このアイデアはどういう経緯で生まれたんでしょうか。
アイデア自体は1年前に始まったのよ。雑誌「Fantastic Man」の編集者がオフィスに来て、「男性用のイアリングを作ってくれないか?」というお願いをされたの。最初私は、「いえ、申し訳ないけど、ちょっとそれは難しいわ。男性用のイヤリングを作るつもりはない」と言ったんだけど。でもジェレミーにその話をして、一緒に考えてくれないかと頼んでみたの。ジェレミーは、耳に大きな傷があるから、縫合や直線をモチーフに作ることを決めたの。
「Serti Sur Vide」は、現代性と伝統を融合させるというあなたのセンスを語る上で、おそらく絶好の例になると思います。クラシックなティアドロップ型のダイアモンドを、ひときわ現代的な方法でマウントしていますね。このような高額な試みに、お父さんを巻き込むのは大変ですか?
いえ、そんなことは全然ないわ。父はむしろ、定番で上品な立てソリティア リングに対して斬新なアイデアを出すように励ましてくれた。父は宝石を収集しているから、23カラットのすばらしいダイヤをずっと持っていて、それを私にマウントするよう頼んでくれたの。それを見たとき「わあ、ちょっとわたしにはできないわ」という感じだった。ソリティア リングを古臭く見えないように作るのはすごく難しいの。だから、できるだけそうならないように、石をこっちに配置してみたりあっちに試してみたり。結局ふたつを一緒にして、できるだけミニマルにはめてみたの。そしたら、それがすごく美しく仕上がったわ。肌の色とうまく融け込むように作りたかったから、ローズゴールドを採用したの。見せびらかすような感じにならないように、さりげなく身につけられるようなソリティア リングを作りたかったから。最近では、ローズゴールドにルビーをあしらったわ。ローズゴールドはルビーを見劣りさせてしまうという理由で、普通はやらないことなんだけど。
普通、ルビーはどんなゴールドと合わせるものなんでしょうか?
ホワイトゴールドね。
売り上げが一番いい商品はどれですか? リング? カフ? それともイヤリングですか?
以前はリングだった。でも今はイヤーカフがトレンドになっちゃって。むしろ人気がありすぎるわ。今や、みんなイヤーカフを欲しがってる。
ゴールドの中で、ホワイト、レッド、イエローのどれが一番好きですか?
レッドゴールド、つまりわたしたちのブランドでいうローズゴールドが好き。肌に溶け込むから好きなの。
ダイヤモンドだったらピンク、ホワイト、ブラック?
ピンクダイヤモンドが好きだわ。
なぜですか?
ピンクダイヤモンドは貴重で、なかなか手に入れることができないから。それから、やっぱり肌に溶け込むから。目につかないようなジュエリーが好きなの。





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