オシェアガ フェスティバルへの誘い

写真家ハンナ・サイダーとSSENSEメンズウェアのアリックス・ラトジーが、モントリオールの音楽とパーティの週末をご案内。Jazz Cartier、Kaytranada、Theophilus London、その他大勢と共に...

  • 写真: Hannah Sider
  • 文: Hannah Sider、Alix Rutsey

1967年万博の会場となったセントへレナ島で毎年8月に開催されるオシェアガ(Osheaga)は、モントリオール最大の音楽フェスティバル。この週末には、100を超えるパフォーマンスと無数のパーティーが、モントリオールの夏をもっともエキサイティングに象徴する。ニューヨークを本拠地として活躍する写真家ハンナ・サイダーが、SSENSEメンズウェアのバイヤーであるアリックス・ラトジーと共に、オシェアガで繰り広げられるクレージーな3日を記録した。

わたしは今、ステージの脇に立ち、激しくビートを刻むスピーカーの真ん前にいる。Jazz Cartier(ジャズ・カルティエ)はいったんステージから姿を消すと、舞台裏から4メートルの梯子を引きずりながら、走って戻って来た。大急ぎでその梯子を据えると、パフォーマンスを続けながらそれに上る。後方では花火が打ち上げられ、聴衆の中のキッズたちは興奮の坩堝を巻き起こす。今日は、オシェアガ フェスティバルの土曜日。今週末、モントリオールは最高の仕事をしている。
—ハンナ・サイダー

金曜日、No Vacancy Inn(ノー・ベイカンシー・イン)を見るために、ハンナとわたしはApt. 200に向かう。同じ通りのクラブÉcole PrivéeでパフォーマンスをするTheophilus London(セオフィラス・ロンドン)が、セットの前に現れる。この街で育まれているコミュニティを目にするのは、とてもクールな気分。誰もがお互いに支え合っている。ずっと長い間、それはモントリオールの中だけに限られていた。今はもう違う。人々はこの街にやって来て、ここで起きているすべてのクールなものを見ている。
—アリックス・ラトジー

Le BelmontでTommy Kruise(トミー・クルーズ)を見るために、わたしたちはこっそり抜け出す。彼は、20人のスケーターと200本のビールに囲まれて、地下のプライベートスペースにいる。今から上へ行って、ターンテーブルを回すところ。前回わたしがモントリオールに来たときに、Dimeのスケートコンテストで優勝したのを目撃したJamal Smith(ジャマール・スミス)のポートレートを何枚か撮る。
—ハンナ

この日の夜遅く、Theophilus Londonのパフォーマンスを何曲か聞きに行く。どのパーティも何がスゴいって、アーティストと一緒になってパーティを楽しむキッズたちでいっぱいなこと。DJたちも観客に混ざって、みんなクレイジーになっていく。そして、ひとつのビッグなパーティになる。パーティのエネルギーは、もう信じられないぐらい。
—アリックス

土曜日はフェスティバルに行って、Kaytranada(ケイトラナダ)のセットから始める。バックステージには彼の家族と親友がつめかけていて、とても微笑ましい。みんなお互いにもう何年も知っている仲。まるで家族パーティの中にいるみたい。ただし、最高のDJといっしょにね。
—アリックス

Jazz Cartierのセットのあと、わたしたちはFuture(フューチャー)を見るために、聴衆をかき分けながら進む。Jazzは、何千人もの人に向けて素晴らしパフォーマンスしたあと、次の瞬間には聴衆の中で友達と踊っている。とてもクール。
—アリックス

電車から降りようとすると、誰かがわたしを呼んでいるのが聞こえる。「パーティやりたいかい?」。振り返ると、上半身裸で炭酸アルコール飲料のフォー・ロコを頭の上に載せてバランスを取っている、カウボーイハットをかぶったオーストラリアの若者だ。彼は、間違いなく、今夜どこのアフターパーティにも辿りつけない。わたしたちと違って。わたしは、今夜DJをするするためにニューヨークから飛んで来たベストフレンドKitty Cash(キティ・キャッシュ)と、Apt. 200でパーティを主催するんだから。着くと、外にはすでに黒山の人だかり。今夜は狂った夜になることが、もうわかる。
—ハンナ

Jazz Cartierと彼のクルーが来て、パーティが始まる。Jazzは天井のパイプにぶら下がって揺れている。わたしはそこに立って、パイプが壊れないよう祈っている。パフォーマンスを終えたHeron Preston(ヘロン・プレストン)が駆けつける。みんな汗にまみれて踊っている。どんどんシャツを脱いでいく。誰も彼もが一晩中叫んでいる。「モントリオールに引っ越すんだ。ここは最高にイカしている」
—アリックス

いつの間にか、Saintwoodsでのアフターパーティに足が向いている。Vintage Frames(ビンテージ・フレーム)のCorey Shapiro(コーリー・シャピロ)がボトルを振り回している間、わたしたちは屋上に座って音楽を聞いている。ヘロン・プレストンは屋根に空いた穴から落ちそうになって、パニックしている。うわっ、危ない。 キティとわたしは、家に帰るUberの中で眠りに落ち、朝8時に彼女が出発するのに気付いて目が覚める。彼女は、次の週末もまたここに戻って来たいと言う。
—ハンナ

携帯電話を見て初めて今日が土曜日だと知るものの、そうでなければ右も左もわからない状態。ブランチのために、SuwuでJazzと彼のクルーと会う。カナダにはブラッディ シーザーがあることを思い出し(ニューヨークに何でもあるわけではない)、わたしたちはみんなゾンビから人間に戻る。
—ハンナ

日曜は、Skepta(スケプタ)を見に行く。彼のセットは素晴らしい。1年前にはおそらく誰も聞いたことがなかったスタイルの音楽で盛り上がっている観客を見るなんて、ほんとにクール。
—アリックス

Dimeの共同設立者Vince(ヴィンス)を撮影するために、伝説的なベーグル ショップSt Viateur Bagelへ急ぐ。Vinceは、最近、この店のマスコットのタトゥーを入れたばかり。つまり、ニッコリ笑う手足の付いたベーグル。夜の11時に、彼は上半身裸で微笑みながら店内に立っている。お店に入って来るお客さんは混乱している。
—ハンナ

わたしたちの邪魔をする人は誰もいない。彼は、タトゥーのおかげで、1ダースのベーグルを無料で進呈されたらしい。
—アリックス

今夜はSkeptaとPigalle(ピガール)のチームがApt. 200に集まっているので、3日連続で通っていることになるけど、まったく嫌じゃない。Thomas Pilgrim(トーマス・ピルグリム)、別名Rue De Bois(リュー・ドゥ・ボア)がDJをしている。その夜は、照明がついて最後を迎える。誰もその場を離れたくない。ショットを載せたトレーが行き交っている。Thomasは、Outkast(アウトキャスト)の「Hey Ya」をかけて、果敢に抵抗する。
—ハンナ

  • 写真: Hannah Sider
  • 文: Hannah Sider、Alix Rutsey